悠言録

 「あなたの恨み、私が晴らします」。先月末に偲(しの)ぶ会が開かれた作家の山崎豊子さんが、昭和60年8月の日航ジャンボ機墜落事故で企業に牘されてしまった真実瓩貿る小説「沈まぬ太陽」を書くことを決めた時、遺族の家を訪ねてそう言い放ったという▼日本新聞協会が実施した今年度の新聞広告クリエーティブコンテストのテーマは「しあわせ」だった。最優秀賞「めでたし、めでたし?」のキャッチコピーは、不器用な手書きの「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました」▼「一方的な『めでたし、めでたし』を、生まないために。広げよう、あなたがみている世界」とあり、泣いている子鬼が描かれている▼しあわせとされている「常識」の風景も、退治された敗者の視点からみると全く別の世界となる。社会や後世に真実を発信するすべを封殺された弱者の怨念を晴らすのも、新聞の任務のはず▼弊紙購読者で、大阪市大で研究員をしている大学時代からの親友が「かくれスポット大阪」という大阪市内の歴史探訪ガイドを刊行し、数日前、全国紙で書評されていた。大大阪の繁栄を下支えしていたにもかかわらず、行政によって排除され、一般市民から蔑視されてきた人たちにスポットを当てた本だ▼敗者側の哀(かな)しさを代弁しようと訴える情念のこもった検証記事に、恨みを晴らすエネルギーのある見出しを付けられる熱さを持ちたい。   (奇)

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