悠言録

 現存する世界最古の舞台芸術といわれる「能」。麗しき日本の風土に生まれ、育まれてきた芸能の中でも幽玄の美と洗練された写実性が絶妙のバランスを醸し出すわが国を代表する伝統芸能だ▼その能楽発祥の地を自負する田原本町の観光協会ホームページには、能楽に関係する町内の地名やゆかりの寺、文献などを多彩に紹介しており、ぜひ多くの方に訪れていただき、「能の世界」を堪能してもらいたいと思う▼その能や狂言を演じるところが能舞台だが、明治10年創業の大阪・ミナミの料亭「大和屋」に豪壮な能舞台があった。本日付3面の連載「奈良に育まれ〜我が半生の記」で近鉄会長の山口昌紀氏が記しているが、料亭の能舞台として当時、大きな話題を呼んだという▼「大和屋歳時」(柴田書店)で作家司馬遼太郎は「大和屋の大広間の場合、ながながとつづく明かり障子をあけ放たれると、豪宕(ごうとう)な能舞台があらわれる。おそろしいばかりに古格を踏み、しかも木口がつねににおうように息づいている」と絶賛▼秀吉の聚楽第や伏見城の能舞台と比較し「それよりまさるのは、この能舞台は照明を自在につかえ、かつ音響効果に配慮されている点である」と記している。芸妓の養成所もあり、十日戎の宝恵駕(ほえかご)も登場した▼店の移転でこの能舞台は保存中。能楽の発祥の地である奈良で、ぜひとも復活したいものだ。(純)

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