悠言録

 「天の原 ふりさけみれば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも」―。古今和歌集にある遣唐使、阿倍仲麻呂が詠んだ「三笠山」は春日野の東に仰ぐ御蓋山(みかさやま)で、古来、神の宿りし山として人々の信仰を集めてきた▼この古代から信仰の篤い御蓋山の麓に奈良時代、日本の国の安泰と国民の幸せを願い創祀されたのが春日大社だ。以来、桧皮屋根の本殿の端麗な姿は、豊かな自然とともに変わらぬ姿で多くの人々に親しまれ、崇敬されてきた。平成10年12月には春日大社や春日山原生林を含む「古都奈良の文化財」がユネスコの世界遺産に登録された▼春日大社によると、年間2400回以上のお祭りが奉仕されており、その中で至高最上の祭典が20年に一度行われる「式年造替(しきねんぞうたい)」といわれる。「式年」とは「定まった一定の年限」、「造替」とは「本殿を造り替える」という意味で、本殿の位置は変えずに建て替え、あるいは修復を行うため「造替」という▼その第60次式年造替が来年、再来年の2年間にわたって行われる。768年の創建以来、1200年にわたってほぼ20年に一度、本殿の建て替えや修繕が粛々と行われ、60回目の造替に伴う諸儀式が来年3月から始まるのである▼昨年の第62回伊勢神宮の式年遷宮に続き、春日大社の式年造替。次世代へと伝え継ぐべき日本人の信仰の形とともに、貴重な文化遺産でもある。(純)

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