悠言録

 「母校がなくなる」のは多くの人にとって寂しいものだろう。私も県立高校の再編合併によって母校を失い、なんとも言えない悲しさを感じた一人だが、少子高齢化、人口減少が急速に進む日本では当然の流れとして受け止めた▼昨年の夏の甲子園予選の奈良大会。合併後初めて母校の応援に橿原の球場へ足を運んだ。無論母校の勝利を願い応援したが、聞いたことのない校歌が流れると目に見えない距離感を感じた▼近年、体罰やセクハラなどの不祥事で揺らぐ教員に対する信頼。モンスターペアレントという言葉も生まれ、生徒との距離を縮めるには教員も慎重にならざるをえない教育現場が形成された▼ソフトバンクグループが運営する「サイバー大学」。一度も通学せずに四年生大学の卒業資格を取得できる。時間を効率良く使え、働きながら受講できるなどのメリットに対して「人間関係が希薄になる」など危惧する声も挙がる▼県統計課の推計人口調査によると平成12年から16年連続で県の人口が減少している。吉野で和紙づくりを営む伝統技術伝承者協会理事の上窪良二氏は「後継者が見つからない」と嘆く▼国が掲げる“地方創生”。各自治体の首長は「地元に誇りを」「地域をよく知ろう」と訴えるが、果たして県民の意識はどうか。かじ取りを間違えれば“地方消滅”にもなりかねない。「母校への愛」は失っても「故郷への愛」は失いたくない。(梶)

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