悠言録

 「はたらけど はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり ぢつと手を見る」と詠んだのは石川啄木。この短歌が収められた歌集「一握の砂」が発表されたのは、明治43年のこと▼100年以上も前の短歌だが、表現されている思いは、現代を生きる多くの人の意識と変わらないのではないか▼終身雇用制が崩れつつある中、就業形態は多様化し、いまや不安定な雇用条件で働く非正規社員が全体の約4割を占めるまでになった。安倍政権が進めるアベノミクスについても、「好業績は大企業や一部の業種にとどまっている」といった声は根強い▼本来は事業縮小などで離職に追い込まれた人の再就職を支援する国の助成金をめぐり、人材会社が企業のリストラを支援するなどしていた問題が国会で取り上げられた。正社員であっても、いつその場を追われてもおかしくない状況だ▼平成27年度県民アンケートによると、「現在の暮らし向きの実感」について、「満足している」が62・6%に上ったものの、前年度に比べると1・3%減少した。一方、「不満がある」と答えたのは22・3%で前年度比1・0%増加した。「1年前と比較した暮らし向きの実感」は、40・8%が「苦しくなった」と訴えている▼勤め人であれば月末は給料日という人は多いはず。じっと見るのは手にする給与明細だろう。並んだ数字に啄木の短歌が、思わず口をついて出る平成の世か。(敏)

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