悠言録

 「涙する目」「傾ける耳」「差し伸べる手」。人のためにもらい泣きする。違う意見にも弱者の声にも耳を傾ける。そしてその手は「奪い取る手」ではなく、家族や地域、国境を越えて「差し伸べる手」▼「人の痛みに思いをはせることができない幼児的凶暴性に満ち溢れている今こそ、こうした大人の感性が求められている」と先日開催された「ビジネスフォーラム2016」(奈良トヨタグループ主催)で同志社大学大学院教授の浜矩子さんは熱く語った▼「アベノミクス」を「アホノミクス」と言ってはばからない浜さん。国境なき共生の時代に、国境を取り戻そうとする勢力が幼児的凶暴性を発揮し、誇大妄想を生み出し、経済発展こそ国民の幸せとして強い国家の実現を目指す下心を批判する▼東日本大震災からきょうで丸5年。未曽有の被害に震撼(しんかん)したことを決して忘れまい。あの時、私たちは被災地の悲惨な現状に涙し、耳を傾け手を差し伸べたではないか▼それと同時に、わが国の進むべき道に大きな警鐘を鳴らしたのもこの大震災だったはずだ。ところが、特に原発事故の教訓はどこかに吹き飛んだ感が強い。いまだ10万人近くの人たちが避難を続けているというのに▼この5年の節目にこそ、被災地の原点に立ち戻り、大人の感性で、これから進むべき道を見つめ直すべきではないか。もうこれ以上後悔することがないように。(純)

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